英国のEU離脱(Brexit)と日EU経済連携協定(EPA)に係るビジネス・セミナーの開催

平成29年12月18日
モントゴメリー第二外務・貿易次官
兒玉欧州連合日本政府代表部大使
 
1.概略

11月22日、当大使館は、ダブリン市内にて、「2017年日本大使館ビジネス・セミナー:英国のEU離脱(Brexit)と日EU・EPA」を開催しました。本セミナーは、英国のEU離脱や日EU・EPA合意を受けてアイルランド及びEU地域を取り巻くビジネス環境が大きく変化する可能性もある中、アイルランドでのビジネスに携わる又は関心を有する日本企業、更には、日本とのビジネスに関心のあるアイルランド企業等を対象に、有益な情報を提供し、日・アイルランド並びに日EU間のビジネスを促進することを目指したものです。
 
2017年は、日・アイルランド外交関係樹立60周年に当たりますので、本セミナーは、これを記念する事業の一環でもありました。
 
2.英国のEU離脱とこれを受けた動向に関して

セミナーは、二つのパートに分かれており、第一部では英国のEU離脱をテーマとしました。最初の基調講演者であるアイルランド外務・貿易省のモントゴメリー第二次官は、EU・英国間での英国の離脱交渉の現状や見通しを説明すると共に、同交渉において南北アイルランド間の国境問題への対応を重視するアイルランド政府の立場を強調しました。

二人目の基調講演者である欧州連合日本政府代表部の兒玉大使は、日本政府の立場や活動について、EU本部の置かれるブリュッセルからの視点を交えて説明しました。

基調講演に続くパネルディスカッションでは、外資誘致を担うアイルランド政府機関の産業開発庁(IDA)や大手法律事務所幹部、学識者から成るパネリストにより、英国のEU離脱を受けた企業の動向や官民それぞれからの企業支援等に関し議論が行われました。
 
3.日EU・EPAについて

第二部のテーマは、日EU・EPAでした。まず、アイルランド政府内で同EPA交渉の司令塔を務めたビジネス・企業・イノベーション省のケリーEU・貿易政策局長が同EPAの概略を説明し、次いで、同EPAを大いに活用すべく行われた11月中旬のクリード農業・食糧・海洋大臣訪日貿易ミッションに同行したマッカーシー食糧庁長官が、同ミッションの内容や成果を紹介しました。

また、日EU・EPAの具体的なメリットやその活用等に関し、アイルランド地場企業の輸出促進を担う政府機関の商務庁(エンタープライズ・アイルランド)や、トヨタ・アイルランド、さらに、アイルランド食品・農産品関連企業より、事業の拡大方針や期待等が示されました。
 
4.成果

アイルランドは、英国との間で陸の国境を接すると共に貿易をはじめとする多様な分野において密接な経済関係を有しており、英国のEU離脱の影響を英国に次いで大きく受け得ると見られています。こうした点はアイルランドで事業を展開する企業にとっても同様であり、本セミナーを通じ、英国のEU離脱を巡る最前線で活動する産官学の第一人者からの説明を聞くと共に、彼らとの関係を構築する機会を、セミナー出席者に提供できたことはたいへん有意義でした。
 
また、アイルランドの政府及び民間企業が、Brexit対策の一環として、英国の代わりとなる市場の開拓に注力する中、日・アイルランド貿易の拡大並びに経済関係の強化に向け日EU・EPAが果たし得る潜在力をセミナー出席者に示し、同EPAに対する理解を深められたことは大きな成果でした。
 
日・アイルランド外交関係樹立60周年に当たる本年、年初の外相相互訪問や7月の高円宮妃殿下のアイルランドご訪問をはじめ、様々な行事・交流を行ってきました。今回、時宜を得たテーマで本セミナーを成功裏に開催し、一連の「60周年」行事・交流の成果を補強することができました。
 
ケリーEU・貿易政策局長
マッカーシー食糧庁長官講演の様子