「ゴールウェイで考えたこと」(大使からの手紙2月号)

令和8年2月27日
水仙(令和8年2月ダブリンにて撮影)
拝啓
春寒の候、読者のみなさまは、いかがお過ごしでしょうか。2月は、1年で一番短い月であるせいか、「あれ、もう3月か」という思いと、毎朝、日の出が少しずつ早くなり、水仙やクロッカスが顔を出すたびに春の足音を聞く楽しみとが、交互に訪れる時期かもしれません。イタリアの冬季オリンピックには、日本から大勢の選手たちが参加し、連日素晴らしい姿を見せてくれました。
ゴールウェイ市の街並み(令和8年2月撮影)
さて、筆者は今月、アイルランド西海岸の地、ゴールウェイに初めて行ってまいりました。3月のセント・パトリック・デーにアイルランドから日本と韓国を訪問予定のショーン・キャニー運輸担当国務大臣に御挨拶し、実りある日本滞在となるよう打ち合わせを行い、また、今月上旬に日本大使館がゴールウェイで開催した1日領事サービスを含め日頃からお世話になっているゴールウェイ在住の日本人の方々や、ゴールウェイ市役所、アイルランド企業関係者と懇談し、ゴールウェイ大学の学生たちが毎年開催してきたアニメ、コスプレなどの祭典「アクマコン2026」の開会式に出席するためです。
ショーン・キャニー運輸担当国務大臣御夫妻(左)と筆者夫妻(右) (令和8年2月ゴールウェイ県チュアムにて撮影)
「チュアム・チェアー」を作るトム・キャラナン(Tom Callanan)さんの工房 (令和8年2月撮影)
ゴールウェイ県チュアム市にあるキャニー大臣の地元事務所では、大変温かくお迎えいただき、両国企業や観光客の長年の希望である直行便の開設、アイルランドでも関心が高い自動運転など、双方の関心事項について、ひととおり意見交換の後、ジェラルディン・キャニー夫人と家内も一緒に、チュアムの町中をご案内いただきながら、日本の様子を色々とお話しました。チュアムの発音が、日本語でいえば、「しゅっ!」とでもいうのでしょうか、その音のためにアイルランドで最も速い町としても有名であることなど教えていただき、「チュアム・チェアー」という木製の椅子を作っておられるトム・キャラナンさんの工房や、大臣とご兄弟が生まれた病院なども見せていただきました。キャニー大臣ご夫妻の訪日には、ケン・スプラット運輸省次官も同行されるということで、近く、次官ともお会いし事務的な詰めを行います。日本とアイルランドの交流を支える交通インフラ、サービスの発展に向けて、また、アイルランド文化を多くの日本の方々に経験いただく東京及び横浜でのセント・パトリック・デーの催しなど、良い訪問になるものと祈っています。
ゴールウェイ大学(令和8年2月撮影)
「アクマコン」を企画し参加した地元の若者 (令和8年2月ゴールウェイ大学にて撮影)
ゴールウェイは、国際的な文化都市です。長い歴史をもつゴールウェイ大学と、国内の工学系教育機関を統合して設立されたアトランティック工科大学があり、年間を通じて様々な文化行事や学術交流が行われています。日本との関係では、例えば、今年はゴールウェイ大学で9名の日本人留学生が学び、これまで、北九州大学、神戸大学、愛知淑徳大学、青山学院大学との交流があります。

また、ゴールウェイ県内には、160名余りの日本人が住んでいます。2月上旬の1日領事サービスは、大勢の日本人の方々に御利用いただきました。今回懇談したアラン・チーバス・ゴールウェイ副市長やサリー=アン・オブライエン同市観光部長、日本への投資を行っているアイルランド製薬会社「エアロゲン」のデクラン・スレモン上級部長などからお聞きする限りでも、観光、貿易・投資分野での益々の交流発展が期待できます。そして、圧倒的な熱量を感じたのが3日間の「アクマコン」を企画し、参加した地元の若者たちのパワーです。そもそも、行事の名前が「悪魔」の「コンテスト」。寒風の吹く中、思い思いの手作りのコスチュームや、鮮やかな青いTシャツ(!)をまとった彼らの中に身を置くだけで、ゴールウェイと日本、もしかすると新たな姉妹都市関係が誕生し、はたまた、ゴールウェイ発の新しいアイリッシュ・ジャパニーズ文化が創造されている最中なのではないか、との想像がふくらみます。
オスカー・ワイルド(左)とエドゥアルド・ヴィルデ(右:エストニア出身) (令和8年2月、ゴールウェイ市内で撮影)
ちなみに、ゴールウェイは、本年7月から半年間のアイルランドのEU議長国期間中、エストニアとペアとなって、両国駐在の両国大使も一緒になって交流を深める予定とお聞きします。

来年は、日本とアイルランドの外交関係樹立70周年ですので、日本の都道府県・市町村と、ゴールウェイの間にも、新しい関係が誕生しますよう祈ります。昨年秋に就任されたキャサリン・コノリー大統領、その前に2期14年を務めたマイケル・ヒギンズ前大統領ともに、ゴールウェイと深いご縁があることも、ゴールウェイの豊かな文化と歴史と無関係ではないかもしれません。

来週から3月。来月、アイルランドのどこかで、または、このページでお会いできることを楽しみに、御自愛のほどお祈り申し上げます。
敬具
駐アイルランド大使
宮川 学