大使レター 7月号 地域協力の意義
令和8年7月31日
ウォーターフォード市(令和8年7月撮影)
アイルランドのEU議長国就任式典で掲揚されたアイルランド国旗とEU旗(令和8年7月撮影)
拝啓
大暑の候、読者のみなさまにおかれては、いかが お過ごしでしょうか。アイルランドも晴天が続き、ラジオなどで節水が呼びかけられる日もありました。
さて、7月1日、アイルランドは13年ぶり、8度目のEU議長国に就任しました。アイルランドは、27加盟国の地域グループをまとめて、欧州域内においては、競争力を高め、また価値観を共有するEU加盟国との協力を進めるとともに、現在新規加盟の交渉を行っている、ウクライナ、モルドバ、モンテネグロ、アルバニアなどとの交渉を加速していくことを重視しています。また、現下のロシアによるウクライナ侵略の長期化、不安定な中東情勢を踏まえて、欧州の安全保障分野における協力を深めるとともに、これらの問題の早期解決に向けて、EUとして一体となって取り組んでいくことも優先事項として掲げられています。
大暑の候、読者のみなさまにおかれては、いかが お過ごしでしょうか。アイルランドも晴天が続き、ラジオなどで節水が呼びかけられる日もありました。
さて、7月1日、アイルランドは13年ぶり、8度目のEU議長国に就任しました。アイルランドは、27加盟国の地域グループをまとめて、欧州域内においては、競争力を高め、また価値観を共有するEU加盟国との協力を進めるとともに、現在新規加盟の交渉を行っている、ウクライナ、モルドバ、モンテネグロ、アルバニアなどとの交渉を加速していくことを重視しています。また、現下のロシアによるウクライナ侵略の長期化、不安定な中東情勢を踏まえて、欧州の安全保障分野における協力を深めるとともに、これらの問題の早期解決に向けて、EUとして一体となって取り組んでいくことも優先事項として掲げられています。
アイルランドのEU議長国就任式典で演説するゼレンスキー大統領(令和8年7月撮影)
アイルランドのEU議長国就任式典で掲揚されたウクライナ国旗(令和8年7月撮影)
筆者が数年間 勤務したデンマークでもそうでしたが、この時期は、多くの欧州各国の大使館が、年1回の国祭日レセプションを開催する時期でもあります。アイルランドでも、毎週複数回の国祭日レセプションが開催されています。在ダブリンのEU加盟国のレセプションでは、ほぼもれなく、アイルランド国歌、EUの歌(ベートーベン作曲交響曲第9番の「歓喜の歌」)、主催国の国歌の斉唱が行われます。ちなみに、7月1日にダブリン城でアイルランド政府が主催したEU議長国就任記念式典では、アイルランド国歌、EUの歌に続いて、特別ゲストで招待されていたゼレンスキー大統領の前で、ウクライナ国歌の斉唱もありました。
世界には、様々な地域協力がありますが、EUの地域協力は加盟国間の緊密な協力の度合いにおいて、総じて、他の地域協力より一歩先を行っているように思われます。良い面は、27か国が一つの声で発言すると、国際社会の中で、その声は大きくなることがあります。反面、数が多いだけに、なかなか満場一致で立場を統一するまでに時間がかかるようです。
世界には、様々な地域協力がありますが、EUの地域協力は加盟国間の緊密な協力の度合いにおいて、総じて、他の地域協力より一歩先を行っているように思われます。良い面は、27か国が一つの声で発言すると、国際社会の中で、その声は大きくなることがあります。反面、数が多いだけに、なかなか満場一致で立場を統一するまでに時間がかかるようです。
アジサイ(令和8年7月スライゴーにて撮影)
同じことを反対から見ると、日本のようなEU域外国にとっては、ブリュッセルのEUの代表やEU議長国(この半年はアイルランド)と意思疎通すれば、27か国と意思疎通したのと概ね同じ効果が期待できることが見込め ます。ただし、満場一致でない事案もありますので、その場合は、各加盟国と丁寧に意思疎通を重ねる必要があります。
在アイルランド・ベルギー大使公邸での国祭日レセプション(令和8年7月撮影)
バスティーユ・デイ・レセプション当日の在アイルランド仏大使公邸(写真:在アイルランド仏大使館)
さらに言えば、10年余り前に筆者が日本とEUとの経済連携協定交渉チームに参加し、EU側とやり取りした時などに体験したことでもありますが、一度27か国(英国がEUを離脱する前は28か国)で共通の立場を形成すると、域外国が何を言っても、「あなたの考え方を理解はしますが、現実的には、これからもう一度27か国の立場を修正してまとめることは、ほぼ不可能です」との対応になりがちです。なかなか大変です。
では、地域協力には入っていた方が良いのかどうか。日本について申し上げれば、例えば、アジア太平洋経済協力(APEC)、ASEAN+3(日本、中国、韓国)、日米豪印(クアッド)など、複数の地域協力に入り、加えて22の経済連携協定等を結ぶことで、重層的なネットワークを築き上げてきました。EU加盟国に比べますと、会合の頻度や様々な分野における決定の法的拘束力という面では、分野によっては比較的緩やかな地域協力も含まれます。
単純な答えはない質問を立ててしまいましたが、あえて申し上げれば、その国の外交・経済・安全保障政策に応じた、地域協力の組み立て方があるといったところではないかと思われます。
では、地域協力には入っていた方が良いのかどうか。日本について申し上げれば、例えば、アジア太平洋経済協力(APEC)、ASEAN+3(日本、中国、韓国)、日米豪印(クアッド)など、複数の地域協力に入り、加えて22の経済連携協定等を結ぶことで、重層的なネットワークを築き上げてきました。EU加盟国に比べますと、会合の頻度や様々な分野における決定の法的拘束力という面では、分野によっては比較的緩やかな地域協力も含まれます。
単純な答えはない質問を立ててしまいましたが、あえて申し上げれば、その国の外交・経済・安全保障政策に応じた、地域協力の組み立て方があるといったところではないかと思われます。
ジャスティン・ケリー国家警察長官(左)と筆者(右)(令和8年7月撮影)
スライゴーのベンバルベン(令和8年7月撮影)
再度、アイルランドのEU議長国について話を戻します。議長国就任から1か月。ブリュッセルでの日々の会合に加え、アイルランド国内各地でも、雇用・社会政策担当大臣、法務・内務大臣などのEU非公式閣僚理事会が開催されました。この手紙を書いている時点(7月23日)では、ミホル・マーティン首相がEU議長国首脳としてウクライナを訪問し、ウクライナの平和の回復に向けてあらゆる協力を行うべく対話を深めています。「団結による強さ」とのスローガンを掲げ、一歩一歩、EU統合の深化を後押ししているように見えます。日本との関係では、例えば、アイルランドの教育関係当局・機関は、ホライズン・ヨーロッパのような日EU間の研究・開発を後押しするスキームについて、高い関心を持ってフォローしています。また、アイルランド政府は、日本とアイルランド、EUとの共通の関心事項である、経済安全保障の強化について、日本の立場に注意深く耳を傾け、EU内でバランスのとれた議論が行われるよう努力しています。
明日から8月。アイルランドは夏期休暇のモードに切り替わります。読者のみなさまのご自愛のほどをお祈り申し上げ、また来月、このページかアイルランドのどこかでお会いできることを楽しみにいたします。
宮川学
明日から8月。アイルランドは夏期休暇のモードに切り替わります。読者のみなさまのご自愛のほどをお祈り申し上げ、また来月、このページかアイルランドのどこかでお会いできることを楽しみにいたします。
敬具
駐アイルランド日本大使宮川学